レトロゲーム小話3『実は恐ろしいドラクエⅢの女勇者』

2023年1月11日

見間違いかと、リセットした……

二度目のプレイの時である。

最初は性別を男でクリアしたので、次は女にしてクリアしようと思っただけである。

ファミコン版、ドラゴンクエストⅢの話である。

始まりは16歳の誕生日になった主人公が、母親に起こされるという、何気ない風景のはずである。

「このひのために、おまえを

ゆうかんな おとこのことして

そだてたつもりです」

ボタンを連打してスキップしていたが、その文面がおかしいことにきづいた。

勇敢な男の子として、育てたと……

私はすぐにリセットして、確認した。

確かに女勇者は、男の子として育てられたのだ……

世界観を考えれば……

当時の私は12歳。

ファンタジーの世界観を少し理解し始めた時期であり、ドラクエⅢの世界が、男女に求められる役割が違っている世界であることも理解していた。

16歳になると王様に謁見するという流れからも、16歳で大人として一人前(成人)とみなされる世界であることも容易に想像がついた。

女勇者として旅立つということは、それまでに戦闘訓練を受けていたということになる。

武術に長けた人に習ったのであれば、師匠のような存在が登場するだろう。だが、それもない。

つまりは、国の兵役、あるいはそれに近いもので、男子だらけのなかに半ば強制的に放り込まれ、訓練させられたのである。

剣と魔法の世界の兵役といえば……

平和な時代ならともかく、早急に戦える兵士が必要であり、訓練そのものが地獄であることは説明するまでもないだろう。

10代半ばを過ぎた男子、いわゆる男としては一番ゲスでクズの時期に寄せ集められたなかに、女子が放り込まれるわけである。

どんな訓練でも好奇の目で見られることは間違いない。

もうすでに妄想が始まっている人も多いのではないか?

実践訓練などは生傷が絶えないだろうし、先輩からのイジメなど…父親のオルテガブランドがあったとしても、すでに亡くなっているわけであり、そこまで特別扱いはしてもらえないだろう

それをわかっていて、娘を息子として育てた母親の信念、いや怨念のようなものさえ感じたわけである。

王様まで……

朝起きて、母親に言われたことばに衝撃を覚えたが、それはさらに続くことになる。

アリアハン王に謁見した時である

「よくぞきた

ゆうかなる オルテガのむすこ

●●●●よ!」

息子!? つまり国にも息子と伝えていたのである!

オルテガがまだ存命している時に生まれているので、オルテガも含めて、家族ぐるみで隠していた可能性さえ考えられるのである。

勇者オルテガに求められるのは、その意志を継ぐ息子であり、娘とはいえない事情というのものがあったのかもしれないが……

最後は……

ネタバレにはなってしまうが、ゾーマを倒したあと、勇者がいた世界とアレフガルドの地は断絶される。

勇者は肉親である母親と、二度と会えなくなる。

男の勇者であれば、寂しさを思わせるエンディングになるが、女の勇者であれば、また違ったものになる。

女であることを否定し、勇者として育てた母親。

それを成し遂げた今、女勇者はなにを思うのか……

母親を許せたのだろうか……

おわり

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